不動産投資

区分マンション投資の失敗事例|高査定という罠と出口戦略

区分マンション投資の失敗事例|高査定という罠と出口戦略

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毎月の家賃が入っているはずなのに、通帳の残高がじわじわ減っている。空室が埋まらないまま管理会社からの連絡だけが続いている。あるいは、まだ買っていないけれど「今なら手出しゼロで持てます」という営業を受けていて、どこか腑に落ちない。区分マンション投資の失敗事例を検索する人は、だいたいこのどれかの状況にいます。

そして厄介なのは、失敗が表面化するのが購入時ではなく、売ろうとした瞬間だということです。仮に2,000万円で買った区分を売ろうとして、査定が1,400万円、ローン残債が1,700万円だとすると、その差額を現金で用意しないと決済できません。買った時点では誰も教えてくれなかった数字が、出口で一気に顔を出します。

僕は前職で収益不動産の仲介をしていて、査定書を作る側にいました。この記事では、失敗の型を整理したうえで、査定額がどう作られているかという、たぶん一番語られていない部分から書きます。

区分マンション投資の失敗に共通する3つの構造的パターン

区分マンション投資の失敗事例は、突き詰めると「空室=収入ゼロ」「利回りが低い」「自己資金が薄い」の3つの掛け算で説明がつきます。どれか1つなら耐えられますが、3つ揃うと出口まで身動きが取れなくなります。

1つ目は分散が効かないこと。一棟アパートなら8戸中1戸が空いても収入は8分の7残りますが、区分1室は空いた瞬間に収入がゼロになります。それでもローン返済と管理費・修繕積立金は毎月出ていく。収入だけが止まって支出は止まらないという非対称が、区分特有のリスク構造です。

2つ目は利回りの低さ。区分は購入価格に対する賃料相場が低めに出やすく、一棟ものと比べると表面利回り(年間収入÷物件価格)は見劣りしがちです。表面から管理費・修繕積立金・固定資産税・原状回復費を引いた実質で見ると、想像していた数字とだいぶ違う、というのはよくある話です。

3つ目が自己資金比率。フルローンやオーバーローンで買うと、返済比率が高すぎて緩衝材がありません。仮に物件価格2,000万円のうち1,000万円を自己資金で入れていれば、多少の空室や金利上昇があっても赤字転落は避けやすい。逆に自己資金ゼロなら、家賃が1か月止まっただけで持ち出しが発生します。

ここまでは他所の記事にも書いてあります。この先、売却フェーズで何が起きるかを書いている記事はほとんどありません。そこが本題です。

「まず預かってこい」続く、高い査定という入口の罠

不動産会社が出す査定額は、売れる金額の予想ではなく、媒介契約を取るための入口の数字になっていることがあります。これは業界の外からはまず見えません。

僕が入社2〜3年目のとき、都内の区分マンションの査定で、上司から「他社に取られるくらいなら高めに出して預かれ」と指示されたことがあります。相場より300万円ほど高い数字を提示して、専任媒介を取りました。社内では最初から「3か月後に価格改定を提案する」前提で動いていました。実際には2か月半で値下げを提案し、売主さんは渋りましたが、最終的に応じました。

この「3か月」と「2か月半」という数字には意味があります。媒介契約の期間は原則3か月で、更新のタイミングが来ると売主は他社に乗り換えられる。だから、契約が切れる少し手前で価格改定を提案し、契約更新とセットで話をまとめる。値下げ提案のタイミングは、売主の都合ではなく媒介契約のカレンダーに連動しています。

売主から見ると、高い査定を出した会社は「高く売ってくれる会社」に見えます。実態は逆で、高い査定は売主の期待を買って時間を借りる行為です。借りた時間の分だけ物件は市場に晒され、レインズ(不動産会社間の物件情報ネットワーク)に長く載り続け、業者からは「これ、まだ売れてないやつだ」と見られるようになります。売れ残り感が付いた物件は、後から値下げしても足元を見られます。

正直な査定を出した会社は媒介が取れず、盛った会社が預かる。この構造がある限り、査定額の高さは売却力の証明にはなりません。当時の僕もその構造の内側にいた人間なので、偉そうなことは言えないのですが、だからこそ書いておきたい。

満室想定の査定に飛びついた末路

収益物件の査定は、想定賃料の置き方ひとつで数千万円動きます。同じ物件でも、満室想定で計算するか、現況の空室リスクと修繕費を引いて計算するかで、出てくる数字がまったく別物になるからです。

築古で一部空室のある一棟マンションの売却査定を担当したとき、売主さんが複数社に依頼していて、他社が数千万円高い金額を出してきたことがありました。中身を見ると、他社は空室も埋まる前提の満室想定賃料ベース。こちらは空室リスクと今後かかる修繕費を差し引いて算出していました。前提が違うだけで、根拠のない数字を出していたわけではない。ただ、売主さんが見ていたのは金額そのものでした。

結果、高い査定を出した会社と専任媒介を締結。数か月動かず、価格改定を経て、最終的には当初の高い査定額を大きく下回る金額で成約しました。高い査定に飛びついた分の時間と、値下げの心理的コストだけが余計にかかった格好です。

これは一棟の話ですが、区分でもまったく同じことが起きます。空室の区分を「周辺相場ならこのくらい取れます」という強気の前提で査定すれば、収益還元の計算上は高い数字が出る。でも実際に決まる賃料がその前提を下回るなら、その査定は最初から絵に描いた餅です。

だから、査定書を受け取ったら聞くべきことは1つです。「この数字は満室想定ですか、現況ベースですか」。そして空室部分の想定賃料が、周辺の成約賃料(募集賃料ではなく、実際に決まった賃料)と比べて高すぎないかを確認する。募集賃料は「言い値」なので、参考になりません。

査定額が会社によってなぜここまで違うのか、その内訳と各社の計算手法については不動産の査定額はなぜ会社で違う?現場が明かす本当の理由で詳しく書いています。査定書を今まさに見比べている人は、そちらも合わせて読んでください。

出口で待つ落とし穴:逆ザヤ・サブリース・修繕積立金

区分マンション投資でもっとも多い出口の失敗は、売却価格がローン残債を下回る「逆ザヤ」です。売っても借金が残るので、差額を現金で用意できない限り売却自体ができません。塩漬けの完成です。

逆ザヤが起きる理由は主に3つ。新築で買った場合の新築プレミアムが引き渡し直後に剥落すること。築年数の経過とともに修繕積立金が段階的に引き上げられ、実質利回りが下がって買主から見た魅力が落ちること。そして区分は流通量が多く、同じマンション内の別の部屋と価格競争になりやすいこと。元金がほとんど減っていない最初の数年が、逆ザヤがもっとも大きくなる時期です。

サブリース(家賃保証)契約が付いている物件は、契約書の2か所を先に見てください。1つは免責期間——入居者が退去してから一定期間は保証賃料が支払われないという条項です。もう1つは賃料減額改定の条項で、数年ごとに保証賃料を見直せると書かれているのが一般的です。長期の一括借上げをうたっていても、保証賃料の金額がその期間ずっと固定という意味ではありません。さらに、サブリース付きのまま売ろうとすると買主が限定されるため、売却価格に響くこともあります。

もう1つ、意外と見られていないのが管理組合の議事録です。総会議事録と長期修繕計画を取り寄せて、次の大規模修繕がいつで、積立金がいくら足りていないかを確認する。修繕積立金が近く値上げされる予定なら、それは将来のキャッシュフローが確定的に悪化するということです。管理会社か管理組合の理事長に「議事録と長期修繕計画の写しをください」と言えば、区分所有者なら基本的にもらえます。

今すぐやるべき4つの行動—収支再計算・査定比較・議事録確認・専門家相談

すでに区分を持っている人が今週できることは4つあります。順番も含めて書きます。

まず、実際の収支を紙に書き出すこと。年間の家賃収入から、ローン返済・管理費・修繕積立金・固定資産税・保険料・管理委託料・原状回復の積立分を全部引く。頭の中の「たぶんトントン」ではなく、通帳と返済予定表を見ながら数字を並べてください。ここで年間いくらの持ち出しかがはっきりします。返済予定表で今のローン残債を確認するのも同時にやってしまう。

次に、管理組合の議事録と長期修繕計画、そしてサブリース契約書(あれば)を手元に集める。免責期間と賃料改定条項の有無、次の大規模修繕の予定年と積立金の不足額。この2つが分かれば、今後の収支がかなり見えます。

3つ目が売却査定を複数社から取ること。ここまで読んだ人ならもう分かると思いますが、1社だけに査定を頼むのは、盛られているかどうかを判定する材料がないという意味です。3社ほど並べて、金額の高い順に見るのではなく、根拠の書き方を見比べる。満室想定なのか現況なのか、想定賃料は何を根拠にしているのか、成約事例をいくつ引いているのか。数字が近い2社と、突出して高い1社が出てきたら、突出した1社にこそ「この根拠を教えてください」と聞いてください。

収支が赤字で、残債と査定額の差も分からないまま持ち続けるのが一番まずい状態です。売る前提でなくても、今の相場観を複数社から取っておくと、判断の土台ができます。査定依頼そのものは無料で、複数社にまとめて出せるサービスを使えば入力は一度で済みます。

空室が埋まらないまま持ち続けますか

家賃は上がらないのに管理費と修繕費は上がります。手元にいくら残るのかを、先に数字で確かめてください。

無料で相談してみる

4つ目が専門家への相談。返済が苦しくて滞納が視野に入っている場合は、任意売却に詳しい専門家や弁護士に早めに当たってください。追い込まれてからでは選択肢が減ります。また、減価償却費が減って元金返済が増えることで税引後キャッシュフローが悪化するデッドクロスや、売却時の譲渡所得税・損益通算の扱いは、所有期間や個人か法人かで結論が変わります。税額の見込みは必ず税理士に確認してください。ネットの一般論で判断すると、売却のタイミングをずらすだけで手取りが変わるようなケースを取りこぼします。

売却まで進む可能性があるなら、媒介契約の選び方と手続きの全体像は先に把握しておいたほうがいい。家を売る流れ全手順|8ステップと後悔しない媒介契約の選び方に一通りまとめています。専任で預けるか一般で複数社に出すかは、物件の状態と急ぎ具合で答えが変わります。

査定書の金額欄より、その下に書いてある前提を読む

区分マンション投資の失敗事例は、たいてい「入口で数字を信じすぎた」ことに行き着きます。買うときは営業の収支シミュレーションを、売るときは査定書の金額を。どちらも作った人の都合が入っているのに、受け取る側はそれを客観的な数字だと思ってしまう。

今日できることを1つだけ挙げるなら、手元の査定書か収支表を出して、その数字の前提が何ページ目のどこに書いてあるかを探すことです。空室率は何%で計算されているか。想定賃料はいくらか。修繕積立金の値上げは織り込まれているか。見つからなければ、出した会社に電話して聞く。それだけで、次に見る査定書の読み方が変わります。

不動産は、買うときより売るときのほうが実力が問われます。持っているうちに出口を確認しておくのは、悲観ではなく普通の管理です。

よくある質問

Q. 区分マンションを売りたいのに、ローン残債のほうが多いです。どうすればいいですか

まず返済予定表で正確な残債を確認し、複数社から査定を取って差額を金額として把握してください。差額を自己資金で埋められるなら通常売却、埋められないなら金融機関との交渉や任意売却の検討に進みます。滞納が始まる前のほうが選べる手段が多いので、任意売却に詳しい専門家や弁護士への相談は早いほど有利です。

Q. 一番高い査定を出した会社に頼むのはダメなのでしょうか

金額だけで選ぶのは避けてください。査定額は媒介契約を取るための入口の数字になっていることがあり、契約後に価格改定を提案される前提で組まれている場合があります。判断材料は金額ではなく根拠で、収益物件なら「満室想定か現況ベースか」「想定賃料の出どころは成約事例か募集事例か」を必ず確認してください。

Q. サブリース契約が付いたままでも売れますか

売却は可能ですが、買主が引き継ぐ前提になるため対象となる買主が絞られ、価格に影響することがあります。売却を検討する段階で、契約書の解約条項・違約金・通知期間の3点を確認してください。解約に応じてもらえるか、いつまでに通知が必要かで、売り出しのスケジュール自体が変わります。

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