不動産売却

不動産一括査定のデメリットと後悔しない使い方

不動産一括査定のデメリットと後悔しない使い方

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一括査定のサイトを開いて、物件の住所まで入力したところで手が止まった。電話番号の入力欄を見て「これ、送信したら鳴りっぱなしになるやつでは」と閉じた。たぶんこの記事にたどり着いた人の半分くらいは、そういう状態だと思います。

先に立場を書いておくと、僕は一括査定そのものを否定する気はありません。ただ、仕組みを知らないまま送信ボタンを押すと、たとえば机上の査定で3,000万円と出ていた戸建てが訪問査定で数百万円下がる、といった場面で「騙された」と感じてしまう。そこでこじれるのがいちばんもったいない。デメリットの正体を先に知っておけば、同じ結果でも受け止め方と打ち手が変わります。

不動産一括査定のデメリットは「営業電話」だけではない

不動産一括査定の代表的なデメリットは6つあります。営業電話が集中する、氏名・電話番号・住所といった個人情報を複数社に渡すことになる、媒介契約欲しさの高額査定が混ざる、地方や郊外では提携会社が1〜2社しか出てこない、比較対象が増えすぎて決められなくなる、そして机上査定の精度が粗い。この6つです。

このうち、多くの記事が書いているのは前半の「電話が来ます、個人情報を渡します」まで。僕がこの記事で厚めに書きたいのは、その手前にある査定サイトの収益構造と、後半の机上査定と訪問査定で金額が変わる理由です。この2つを理解している人は、査定額が下がったときに慌てないし、高い数字を出してきた会社にきちんと質問できます。

逆に言うと、一括査定は「安く売らされないための相場観を、無料で複数社から取れる道具」であって、それ以上でも以下でもありません。道具として使う前提で読み進めてください。

営業電話が鳴り止まないのは、査定サイトの収益構造のせい

一括査定の申し込み直後に電話が集中するのは、あなたの物件が特別に狙われたからではありません。僕は、査定サイトが不動産会社側から何らかの対価を受け取ることで成り立っているからだと理解しています。課金の方式や単価は各サイトが公表していないため、ここでは断定できません。ただ、利用者が無料で使える以上、費用を負担しているのが売主でないことは確かです。

不動産会社の側から見ると、査定依頼は「タダで降ってくる問い合わせ」ではありません。提携するためのコストを払って受け取っている見込み客です。だから受け取った営業マンは、他の提携社より先に接触しようとします。一括査定の電話が申し込み数分後から鳴り始めるのは、早い者勝ちの構造が背景にあると僕は見ています。

僕が仲介の現場にいたころの感覚で言えば、反響を受け取る営業にとって最重要なのは金額の精度より接触の速さでした。先に会えた会社が媒介契約を取る確率は明らかに高い。電話が丁寧かどうかと、査定が正確かどうかは別の話です。ここを混同すると、いちばん感じのいい営業マンに、いちばん根拠の薄い数字で任せることになります。

対策は単純で、申し込みフォームの「連絡方法」欄でメール希望を選び、備考欄にも「まずはメールで概算をください」と書くこと。備考欄がないサイトもありますが、あれば必ず使ってください。それでも電話をかけてくる会社は、その時点で「こちらの希望を読まない会社」だと判断材料になります。ふるいとしては優秀です。すでに電話が始まってしまった人は査定後の営業電話がしつこい理由と対処法を元業界人が解説のほうに具体的な断り方を書いています。

机上査定と訪問査定で金額が変わるのは、現地でしか分からない条件があるから

一括査定サイトで出てくる金額は、ほぼすべてが机上査定です。机上査定は「現地を見ていない前提の概算」であり、訪問査定で下がること自体は異常ではありません。ここを知らずに数字だけ覚えてしまうと、後で必ず揉めます。

僕が戸建ての売却査定を担当したときの話をします。机上査定の段階では、周辺の成約事例から金額を出していました。エリアも築年数も土地面積も分かっていますから、数字としては出せる。問題はその後です。

現地に行ったら、隣地のブロック塀がこちら側に越境していました。さらに境界標が一部見当たらない。これは、測量をやり直して境界を確定させ、越境については隣地と覚書を交わす必要がある案件です。その分の費用と時間が売却スケジュールに乗ってくる。だから僕は査定額を下げて、理由と一緒に売主へ説明しました。

売主は「ネットの査定と違うじゃないか」と戸惑っていました。当然の反応です。ただ、会社が数字を操作したわけではなく、現地を見て初めて出てきた条件を反映しただけだと説明したら、納得してもらえました。机上査定は情報が足りない状態の暫定値であって、正解ではないんです。

現地で下がりやすい代表例を挙げておきます。境界標の欠損、越境(ブロック塀・樹木・配管)、再建築が可能かどうか、接道の幅と方向、擁壁の状態。このあたりは航空写真と登記簿だけでは判定できません。逆に言えば、訪問査定で一切下がらない会社は、現地を本当に見ているのか疑ったほうがいいとも言えます。

そして重要なのは、この確認の一部は売主が自分でできるということです。敷地の四隅に金属プレートや石の境界標があるか歩いて確認する、隣地との間に越境している塀や枝がないか目視する、確定測量図が手元にあるか探す。この3つは今日中に終わります。測量図が見当たらない場合は、法務局で公図と地積測量図を取得できるか確認する。測量が必要になると費用も期間も追加でかかるので、早く分かるほど有利です。

査定を受ける前の準備全般は家を売る前にやること、査定より先にやる準備にまとめてあります。

高すぎる査定額を出す会社をどう見抜くか

高額査定を見抜く最短の方法は、「この金額の根拠になった近隣の成約事例を3件、成約時期と価格つきで見せてください」と質問することです。この一言で、数字を作っている会社と、事例を積み上げている会社がきれいに分かれます。

不動産会社が相場より高い金額を提示することがあるのは、媒介契約を取るためです。売主は普通、高い数字を出した会社を選びます。だから高く言ったほうが契約を取れる。ところが実際に売り出すと買い手がつかず、しばらく売れ残った末に値下げの提案が来る。最終的に、最初から適正価格で出した場合より安く、長くかかって売れる。これが典型的な失敗パターンです。

質問の仕方にコツがあります。「なぜこの金額ですか」と聞くと、営業は「このエリアは人気があるので」と答えます。それでは意味がない。成約事例か、レインズ(不動産会社が使う取引情報のデータベース)の成約データか、売出中の競合物件か、どれを見て出した数字なのかを具体的に聞く。成約と売出中では意味がまったく違います。売出中の高い物件を並べれば、査定額はいくらでも上げられますから。

比較の目安は最低3〜4社。1社だけだと高いか安いか判断できず、10社集めると今度は決められなくなります。査定額が会社ごとにバラつく理由そのものは不動産の査定額はなぜ会社で違う?現場が明かす本当の理由で掘り下げています。一番高い会社と一番安い会社を機械的に外して、根拠の説明が具体的だった会社を残すのが、実務的には失敗しにくいやり方です。

一括査定を申し込む前に、今日決めておくべき3つのこと

申し込み前に決めておくべきことは3つあります。連絡方法、依頼件数、机上と訪問の使い分けです。この3つを決めてから送信すれば、一括査定のデメリットのほとんどは事前に潰せます。

まず連絡方法。フォームでメール希望を選び、備考欄に希望時間帯まで書く。平日の日中に働いている人なら「平日19時以降、またはメール」と書いておく。次に依頼件数。3〜4社に絞る。サイト側は「一度に6社へ」と促してきますが、比較できる上限を超えると判断が止まります。最後に、机上査定と訪問査定の使い分け。机上査定は相場のレンジを掴むため、訪問査定は実際に任せる会社を選ぶためと割り切る。机上の数字は交渉の材料にはなりません。

加えて、物件種別によっては一括査定が向かないケースがあります。一棟収益物件や築古の再建築不可などは、査定サイトの設計が区分マンション・戸建て中心なので、そもそも適切な会社にマッチングされにくい。この場合は、その種別を専門に扱っている会社を個別に当たったほうが早いです。

ここまで整理できた人は、もう申し込んで大丈夫だと思います。相場のレンジを知らないまま1社だけと話を進めるほうが、営業電話より何倍もリスクが高い。複数社の数字を並べて初めて、目の前の提案が高いのか安いのか判断できるからです。

「売れない」と言われた物件でも

借地権、再建築不可、老朽化した空き家。一般の仲介で断られた物件を専門に買い取る会社があります。相談も査定も無料です。

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査定を受けた後、媒介契約をどれにするかでまた分岐します。専任にするか一般にするかで売却の進み方が変わるので、媒介契約3種類の違いと選び方、営業が専任を勧める理由を契約書にサインする前に読んでおいてください。

今日できることを最後にひとつ。敷地の四隅を歩いて境界標の有無を写真に撮り、自宅の書類から確定測量図を探す。訪問査定の当日にこれを出せると、会社側の査定精度が上がって、後から「やっぱり下がります」と言われる確率が下がります。なお、測量費用や越境の覚書、売却後の税金の扱いは個別事情で変わるので、金額が大きくなる局面では税理士や土地家屋調査士といった専門家に確認してください。

不動産一括査定のデメリットに関するよくある質問

Q. 一括査定を申し込んだけど、やっぱり売るのをやめたい場合はどうすればいいですか

媒介契約を結んでいなければ、査定を受けただけで売却義務は一切発生しません。各社に「今回は売却を見送ります」とメール1通で伝えれば終わりです。理由を細かく説明する必要もありません。連絡せず放置すると架電が続くので、一度だけはっきり伝えるほうが結果的に早く止まります。

Q. 匿名で使える査定サイトのほうが安全ですか

匿名査定は営業電話を避けられる反面、物件種別と築年数程度の条件を概算表に当てはめた結果にとどまり、実勢価格と大きくずれることがあります。相場の当たりをつける入口としては使えますが、売出価格を決める根拠にはなりません。実際に売る段階では、現地を見た訪問査定が必要になります。

Q. 訪問査定で机上査定より下がったら、その会社は信用できないということですか

逆です。下げた理由を具体的に説明できる会社のほうが信用できます。境界標がない、越境がある、接道が不足しているといった現地要因を挙げて説明されたなら、それは正常な査定です。問題なのは、根拠を示さず金額だけを上下させる会社のほうです。

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