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重要事項説明のチェックポイント|契約前に読む時間を作る方法

重要事項説明のチェックポイント|契約前に読む時間を作る方法

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契約日の連絡が来て、「当日は重要事項説明と契約で2時間くらいです」と言われた段階でこの記事にたどり着いた人が多いと思います。たとえば仮に3,000万円の物件を買うとして、その契約の根拠になる書面を、初めて見る日がその2時間の中にある。冷静に考えるとかなり無茶な話です。

重要事項説明、通称「重説」は、読む時間さえ確保できれば素人でも危険信号に気づけます。問題は、その時間が構造的に確保されにくいことのほうにあります。

重要事項説明とは何か、なぜ契約前に読む必要があるのか

重要事項説明とは、宅地建物取引業者が売買や賃貸の契約を結ぶ前に、宅地建物取引士が記名押印した書面を買主(借主)に交付し、口頭で内容を説明する法定の手続きです。宅建業法で義務づけられており、「やってもやらなくてもいい説明会」ではありません。

目的ははっきりしていて、契約を結ぶかどうかを判断するための材料を、契約前に渡すことにあります。つまり重説は、契約の付属品ではなく契約の前提です。読んだ結果「これは買えない」と判断するのも、本来は正当な使い方です。

ところが現場の運用は、この建前とだいぶ離れています。重説と契約書が同じ日の同じテーブルに並び、説明が終わった10分後には署名捺印。読む時間ではなく、聞く時間しか用意されていないのが実態です。

「聞かれなければ言わない」業界の体質は、重説にもそのまま出る

不動産業界には、聞かれていないことは説明しないという文化が確かにあります。僕が在籍していた頃に見た典型例が、レインズの登録証明書の扱いでした。

媒介契約を結んで物件をレインズに登録すると、売主宛に登録証明書が発行されます。そこにはIDとパスワードが書かれていて、売主自身が自分の物件の登録状況を確認できる。ところが、聞かれなければその説明をしない営業がいました。渡してはいても、何に使う紙なのかは言わない。結果として、自分で確認できる手段があること自体を知らない売主が大半でした。僕は渡して説明していましたが、それが社内の統一ルールだったわけではありません。個人の裁量に委ねられていた、という話です。

これは隠蔽というより、もっと鈍い種類の省略です。説明すれば時間がかかる。質問が増える。段取りが崩れる。だから聞かれるまで黙っている。悪意の有無にかかわらず、同じ結果になります。

重説でも構造は変わりません。宅建士は書面に書いてあることを読み上げます。でも、「この記載が将来どう効いてくるか」は、聞かれなければ言わない。書面に「セットバック要」と一行あったとして、それが建て替え時に敷地面積の何割を削る話なのかまで踏み込むかどうかは、担当者次第です。レインズの証明書の話と同じで、自分から動かないと情報は出てきません。登録証明書の中身についてはレインズ登録証明書の見方|隠れた項目と請求の仕方で詳しく書いています。

契約前に必ず見るべき5つのチェックポイント

重説の全項目を素人が読み込むのは現実的ではないので、損が出やすい箇所に絞ります。見るべきは、権利関係・法令上の制限・道路・水害リスク・取引条件の5つです。

1つ目は権利関係、特に「所有権以外の登記」。登記の権利部には所有権に関する登記と、それ以外(抵当権、仮登記、買戻し特約など)が記載されます。抵当権は決済時に抹消されるのが通常ですが、所有権移転仮登記や買戻し特約が残っていると話が変わります。重説に記載があるのに「決済時に消えます」としか説明されなかったら、いつ・誰の費用で・何を根拠に抹消するのかを書面で確認してください。登記の扱いで疑問が残る場合は、司法書士に直接聞くのが早いです。

2つ目は法令上の制限。都市計画法に基づく用途地域、建築基準法に基づく建ぺい率・容積率や高さ制限が記載されます。数値は物件の所在地と地域指定で変わるので、ここでは具体的な率は書きません。見るべきは現況の建物がその制限に収まっているかです。既存不適格(建築当時は適法だが現行基準に合わない状態)だと、建て替えの際に今より小さい建物しか建たない可能性があります。

3つ目は道路との関係。建築基準法では原則として幅4m以上の道路に2m以上接していないと建物が建てられません。前面道路が4m未満の場合、セットバック(敷地を後退させて道路幅を確保すること)が必要になります。セットバック部分は自分の土地でも建築に使えない面積なので、価格の前提が変わります。私道負担の有無と、その私道の所有者・通行や掘削の承諾があるかも合わせて見てください。

4つ目は水害リスク。2020年から、水害ハザードマップにおける物件の所在地の記載が重要事項説明の対象になっています。ただし記載されるのは「ハザードマップ上のどの位置か」であって、安全かどうかの判定ではありません。自治体のハザードマップを自分で開いて、浸水想定の深さと避難所の位置まで見るのが正解です。

5つ目は取引条件。手付金の額と手付解除ができる期限、違約金の額、契約不適合責任(引き渡した物に契約内容と違う不具合があった場合の売主の責任)をどう定めているかです。中古で売主が個人の場合、この責任を一定期間に限定したり免責したりする特約が入ることがあります。免責なのか、期間限定なのか、何日間なのかを必ず口頭で確認してください。ここは物件と売主の属性で条件がまったく変わります。

事前にコピーをもらう頼み方と、断られたときの代替策

重説を事前に読む方法はひとつだけで、契約日より前に重説の案(ドラフト)を送ってもらうことです。やり方は単純で、日程調整の連絡が来たタイミングで「当日しっかり理解したいので、重要事項説明書の案を事前にPDFでいただけますか」とメールで依頼します。電話ではなくメールにしてください。記録が残るのと、担当者が上長に確認しやすくなるからです。

断られる理由はだいたい決まっています。調査が終わっていない、確定前の書面を出すと誤解を招く、社内ルールで不可。最初のふたつは事実のこともあります。その場合は「確定前で構わないので、空欄のままの段階のものを見せてほしい」と条件を下げて再依頼するのが効きます。完成品でなければ出せる、という会社は意外とあります。

それでも無理なら、当日の進め方を変えます。まず、説明が始まる前に「分からない箇所はその場で止めて質問します」と宣言しておく。次に、口頭での回答のうち重要なものは、その場でメモし、後日メールで『こういう説明でしたよね』と送って返信をもらう。これで口頭説明が記録に残ります。最後に、どうしても判断がつかない項目があれば、署名を当日にしない選択肢があることも頭に置いてください。契約日は不動産会社の段取りであって、法律が決めた期限ではありません。

税金、相続、登記が絡む項目で引っかかったときは、担当営業に聞いても正確な答えは返ってきません。税務は税理士、権利関係は司法書士や弁護士の領域で、宅建業者が断定的に答えられる範囲を超えています。契約日が近いと「今さら専門家に聞く時間なんてない」と思いがちですが、オンラインで短時間相談できる窓口もあるので、不安な項目をひとつに絞って、その点だけを専門家に当てるだけでも判断の精度は変わります。

「売れない」と言われた物件でも

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投資用・収益物件の重説で、見落とされやすい項目

収益物件の重説でいちばん揉めやすいのは、賃貸借契約の引継ぎ条件です。居住用の解説記事はここをほぼ扱いませんが、一棟や区分の投資案件では、建物の状態より賃貸借の中身のほうが収支に直結します。

見るべきは3点。敷金・保証金の承継がどう処理されるか、既存の賃貸借契約に特約(フリーレント、原状回復の負担区分、更新料の扱いなど)が付いていないか、サブリース契約がある場合はその解約条件と賃料改定条項です。サブリースの賃料は改定されうる前提で見るのが実務感覚で、契約書原本を見ずに「賃料〇〇万円」だけで判断するのは危ないです。

もうひとつ、その数字が満室想定なのか現況賃料なのかを必ず確認してください。販売図面の利回りは満室想定で作られていることがあり、空室がある物件では実際の入金額と乖離します。判断の分岐はシンプルで、レントロール(部屋ごとの賃貸条件一覧)と直近の入金実績の両方を取れないなら、契約を急がない。取れるまで待てない案件は、そもそも情報開示に問題があると考えたほうがいい。区分の失敗パターンは区分マンション投資の失敗事例|高査定という罠と出口戦略にまとめています。

なお、記載漏れや説明不足が後から発覚した場合、損害賠償や契約解除を求める道はありますが、実務上は「説明がなかったこと」の立証が壁になります。口頭説明をメールで残す意味は、ここにあります。

今週中にやっておくこと

重説を受ける予定がある人がすぐできるのは2つです。ひとつは、仲介会社に重要事項説明書の案を事前送付してもらうようメールで依頼すること。文面は「当日の理解のため、確定前の段階で構わないのでPDFをいただきたい」で十分です。もうひとつは、物件の住所を自治体のハザードマップで自分で検索しておくこと。5分で終わります。

売主側で、まだ契約前の段階にいる人は、媒介契約の内容と販売状況の見え方から見直しておくと安全です。売却全体の流れは家を売る流れ全手順|8ステップと後悔しない媒介契約の選び方で整理しています。

重説は、宅建士に読み上げてもらう儀式ではなく、買うかどうかをもう一度決め直すための時間です。その時間を自分で作れるかどうかだけが分かれ目になります。

よくある質問

Q. 重要事項説明書は契約の何日前にもらえますか?

法律上「何日前」という期限の定めはなく、契約当日に交付・説明される運用が一般的です。事前に欲しい場合は、自分から案(ドラフト)の送付を依頼する必要があります。依頼はメールで、記録が残る形にしてください。

Q. 重要事項説明に記載漏れがあったら契約を解除できますか?

記載漏れや虚偽説明があった場合、契約解除や損害賠償を求められる可能性はありますが、実務では「説明がなかった」ことの立証が難しく、簡単には進みません。だからこそ説明時の質疑をメールで残しておくことが有効です。個別の可否は弁護士への相談を前提に判断してください。

Q. オンライン(IT重説)でも説明の内容は同じですか?

説明すべき法定項目は対面でもオンラインでも同じです。違いは実施方法で、画面越しだと書面をめくりながら追いにくく、質問のタイミングを逃しやすい点に注意してください。オンラインの場合こそ、事前に書面を手元に用意しておく価値が高くなります。

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