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専任媒介の契約書と一緒に渡された紙束の中に、「登録証明書」という1枚が紛れていたはずです。物件番号と、英数字が並んだIDとパスワード。営業担当から「これ、レインズの登録証明書です」とだけ言われて、それきり説明がなかった。あるいは、そもそもそんな紙をもらった記憶がない。どちらのパターンもよくあります。
この1枚は、売主が自分の物件の売却状況を自分の目で確認できる、ほぼ唯一の手段です。売主が自分でログインできることを知らないまま売却を終える人が大半という状態が、業界にとってはずっと都合がよかった。そのあたりも含めて、証明書の読み方を整理します。
レインズ登録証明書とは?発行義務がある契約とない契約
レインズ登録証明書とは、不動産会社が売却物件をレインズ(不動産会社専用の物件情報ネットワーク)に登録したことを証明する書面で、専属専任媒介契約と専任媒介契約では売主への交付が宅建業法上の義務です。登録するだけでなく、登録したことを証明する書面を売主に渡すところまでがセットになっています。
登録の期限は契約の種類で分かれます。専属専任媒介契約は媒介契約締結日の翌日から5営業日以内、専任媒介契約は翌日から7営業日以内。営業日なので、不動産会社の休業日やレインズのシステム休止日は日数に数えません。
一方、一般媒介契約にはレインズへの登録義務がありません。任意で登録することはでき、その場合は登録証明書も発行されますが、実務では一般媒介でわざわざ登録する会社は多くありません。一般で複数社に出しているのに証明書が1枚も来ない、というのは違反ではなく通常の状態です。
証明書のどこを見ればいいか、記載項目を1つずつ確認する
登録証明書で最初に見るべきは、売主専用のIDとパスワード、そして物件番号と登録年月日の4点です。この4つが揃っていれば、あとは自分でレインズにログインして中身を確認できます。逆に言えば、この4点が読めれば営業担当の説明はなくても困りません。
IDとパスワードは「売却依頼主用」と書かれた欄に記載されています。これは不動産会社が業務で使うレインズのアカウントとは別物で、売主が自分の物件だけを閲覧するための限定的なものです。物件番号は登録された物件に振られる管理番号。不動産会社に問い合わせるときにこの番号を出すと話が早く進みます。
登録年月日は、期限内に登録されたかを確認する数字です。媒介契約書に書かれた契約日とこの登録日を並べて、5営業日または7営業日に収まっているかを見てください。証明書を受け取ったその場で、契約日と登録日を突き合わせるだけで済みます。
僕が前職にいたころ、この書類を売主に渡しても、聞かれなければ中身を説明しない営業がいました。渡す・渡さないすら社内で統一されたルールになっていない。僕自身は渡していましたが、それは会社の方針ではなく個人の判断でした。つまり説明があるかどうかは担当者個人の性格に依存しているのが実態です。
売主側から見れば、悪意がなくても説明されないことは普通に起きるということ。だから受け取った時点で自分から「これでログインできるんですよね」と一言確認するのが早いです。その一言で、担当者側の「この売主は見るタイプだ」という認識も変わります。
なお、価格を変更するとレインズの登録内容も更新され、その都度新しい証明書が発行されます。値下げの相談をしたのに証明書が来ない場合、レインズ上の価格が古いまま残っている可能性があるので、変更後の証明書も忘れずに請求してください。
IDとパスワードでログインして分かること、分からないこと
売主用IDでログインすると、自分の物件がレインズにどう登録されているか(価格、間取り、面積などの登録内容)と、現在の取引状況ステータス(公開中/書面による購入申込みあり/売主都合で一時紹介停止中)が確認できます。手順は、まず東日本レインズなど該当するレインズ機構の公式サイトを開き、次に「売却依頼主用物件確認」の入口を選び、最後に証明書のIDとパスワードを入力する。これだけです。
見るべきは価格と面積が合っているか、そして取引状況です。買付が入っていないのに「一時紹介停止中」になっていたら、その理由を担当者に確認してください。売主が知らないところでステータスが変えられていれば、他社からの問い合わせは止まります。
ここで一つ知っておいてほしいのが、レインズ上のステータスと、他社への電話対応は別物だということです。買主側の客付けで動いていたころ、レインズで見つけた物件に物件確認の電話をしたら「商談中です」と即答されたことがあります。2週間後、同じ物件がポータルサイトに掲載され続けていた。もう一度電話しても回答は同じ「商談中」。結局その物件は自分の顧客に紹介できないまま終わりました。
商談中という言葉は、電話口で口頭で言えてしまいます。外部の業者から見て、それが本当かどうかを確かめる方法はありません。ポータルに出続けているという事実だけが残る。
売主側から見ると、この状況は完全に見えないところで起きています。自分の物件が他社から問い合わせを受けていたのか、受けて断られたのかを知る手段がない。だからこそ売主自身がレインズのステータスを定期的に見ることに意味があります。ステータスが公開中のまま何ヶ月も動かず、担当からは「反響はあるのですが決め手に欠けて」と報告が続く状態なら、その報告の中身を具体的に詰めるべき局面です。
ただ、売主用画面には限界もあります。広告の可否設定や、他社からの問い合わせの履歴といった業者側の運用情報は、売主画面では確認できないとされています。つまりログインしても、囲い込みの証拠そのものが画面に出てくるわけではありません。ステータスの不自然さという「兆候」までしか分からない。この構造を理解したうえで見ないと、「ログインしたけど普通だった」で安心してしまいます。
電話対応レベルで何が起きているかを推し量る方法は、「商談中です」の裏側―レインズ囲い込みの実態と対処法で別途書いています。
5営業日・7営業日はいつから数える?期限計算の落とし穴
登録期限の起算点は媒介契約の締結日で、日数のカウントは翌日から始まります。専属専任なら翌日から5営業日以内、専任なら翌日から7営業日以内。営業日ベースなので、土日祝や不動産会社の定休日(火水休みの会社は多い)、レインズのシステム休止日はカウントに含まれません。
実務で誤解が起きやすいのは、契約日をいつと見るかです。契約書の日付欄に記入された日と、実際に双方の意思が合致した日がずれることがあります。こちらは解釈が分かれる論点なので、争いになりそうな場面では宅建協会や行政の窓口、必要なら弁護士に相談するのが確実です。
ざっくり言えば、専任で契約して2週間経っても証明書が来ないなら、休業日を差し引いても期限は過ぎていると考えていい。カレンダーを1日ずつ数えて悩むより、この目安で動いたほうが早いです。
一般媒介の場合は、そもそも登録義務がないので期限の話は出てきません。依頼すれば登録して証明書を出してくれる会社もありますが、少数派です。レインズ掲載を確実にしたいなら、契約形態を選ぶ段階から考える話になります(媒介契約3種類の違いと選び方、営業が専任を勧める理由)。
証明書が届かない・期限を過ぎている場合に今日やること
証明書が届いていないなら、まず担当者にメールで交付を請求してください。電話ではなくメールにするのは、請求した事実と日付が記録に残るからです。文面は凝らなくていい。「◯月◯日に専任媒介契約を締結した◯◯です。レインズ登録証明書がまだ手元に届いていないため、交付をお願いします。登録済みの場合は登録年月日もあわせてご教示ください」で十分伝わります。
次に、返ってきた登録年月日と契約日を照合します。期限を過ぎていたら、責めるトーンではなく事実として「専任媒介は翌日から7営業日以内の登録と認識していますが、登録日が◯日になっている理由を教えてください」と聞く。売主が期限を知っていると分かった時点で、その後の対応の質は変わります。これは脅しではなく、担当者の優先順位の問題です。
それでも証明書が出てこない、登録もされていない様子なら、宅建業法上の義務に関わる話なので、都道府県の宅建業担当部署(不動産業課など)や宅建協会の相談窓口に問い合わせる選択肢があります。ここまで来ると、その会社に任せ続けるかどうかという判断も同時に必要になります。
媒介契約は原則3ヶ月。更新時期は、会社を替えられる数少ないタイミングです。証明書ひとつ出てこない、活動報告も中身が薄いという状態が続いているなら、更新を見送って別の会社に切り替える判断は十分合理的だと僕は考えています。報告の中身の見極め方は売却活動の報告義務、頻度より中身を見るべき理由にまとめました。
切り替えを検討するなら、比較対象を先に持っておいたほうが話が早いです。今の会社の価格設定や売却戦略が妥当だったのかは、他社の査定を並べてみないと判断のしようがありません。査定を取ること自体は無料で、依頼したからといって媒介契約を結ぶ義務もない。今の担当に不信感がある状態で「他も見てから決めます」と言えるだけの材料を持つ、という使い方です。
今日か今週にできることを2つに絞ります。ひとつ、手元の書類をひっくり返して登録証明書を探し、IDとパスワードでレインズにログインして取引状況を自分の目で見る。ふたつ、証明書が見つからなければ今日のうちにメールで交付を請求する。この2つだけで、囲い込みが起きにくい売主になれます。営業側から見て、見ている売主と見ていない売主では扱いが違うというだけの話です。
結局、あの1枚は売主の目である
登録証明書は、優良業者の証というより、売主が自分の売却を自分で監視するための鍵だと思っています。渡す側が説明しないことが珍しくない以上、受け取る側が意味を知っているかどうかで差がついてしまう。理不尽ですが、今のところそういう構造です。
契約を結んだら、その場で「登録証明書はいつもらえますか」と聞く。もう結んでしまったなら、今日メールを1通送る。それだけで、見えなかった部分の半分くらいは見えるようになります。
Q. レインズ登録証明書を紛失した場合、再発行してもらえますか?
依頼した不動産会社に連絡すれば再発行または再送してもらえます。不動産会社側はレインズに登録した証明書のデータを保存しているため、原本を紛失しても対応可能です。IDとパスワードだけが分かればログインはできるので、まずは契約時の書類一式とメールの添付ファイルを探してみてください。
Q. 登録証明書はPDFなどの電子データで受け取っても有効ですか?
電子データでの交付でも問題ありません。実務ではメール添付のPDFで送られてくるケースも一般的です。紙で受け取っていなくても、契約直後のメールに添付されていないか確認してみてください。記載されているIDとパスワードでログインできれば、形式は紙でもPDFでも同じように使えます。
Q. 売主用IDでログインしたら「一時紹介停止中」になっていました。どうすればいいですか?
買付(購入申込み)を受けた覚えがないのに一時紹介停止中になっている場合は、担当者に理由と、いつ誰の判断で変更したのかを確認してください。売主の依頼がないままこのステータスになっていると、他社からの紹介が止まります。回答が曖昧なら、やり取りをメールに切り替えて記録を残しておくことをおすすめします。



