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不動産の値下げ提案タイミング、応じる前に見る数字

不動産の値下げ提案タイミング、応じる前に見る数字

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売り出してから2ヶ月が過ぎたあたりで、担当の営業から「そろそろ価格を見直しませんか」と切り出される。資料には反響数と内見数のグラフが載っていて、周辺の成約事例も添えられている。理路整然としていて、反論の材料が思いつかない。そんな流れに、いま立っているのではないでしょうか。

その提案、内容以前に「なぜ今このタイミングで出てきたのか」を先に考えてほしいんです。僕は前職で、その提案を出す側にいました。

値下げ提案が来るタイミングには社内の事情が隠れている

値下げ提案が売り出しから2〜3ヶ月目に集中するのは、買い手の動きが変わるからではなく、媒介契約が3ヶ月更新だからです。専任媒介・専属専任媒介の契約期間は宅建業法で3ヶ月が上限と決まっていて、実務ではほぼ全社が3ヶ月で結びます。つまり営業には、3ヶ月ごとに「更新してもらう」という関門が来る。

僕がいた会社では、1回の契約期間で1回は価格改定を提案するという流れが社内に定着していました。誰かが規則として決めたわけではないのに、みんなそうしていた。そして提案を出すのは決まって契約期間の後半です。

理由はシンプルで、更新の話をするときに「この3ヶ月、何もできませんでした」とは言いたくないからです。価格改定を提案しておけば、更新面談の場で「次の3ヶ月はこの価格で勝負しましょう」という前向きな話に持っていける。売主にとっても、動きがあるように見える。

だから値下げ提案そのものが悪だとは言いません。実際に価格が市場とズレていることもある。ただ、提案が出てきた時期が契約期間の後半に重なっているなら、そのタイミングは市場が決めたものではなく社内のカレンダーが決めた可能性があると、頭の隅に置いてください。

見分け方は意外と単純です。営業に「この2ヶ月で、どの週に反響が落ちましたか」と聞いてみる。相場とのズレが本当の原因なら、反響の落ち方に説明がつきます。ところが「全体的に市況が…」という話にスライドしていくなら、それは数字ではなく空気で語っている。売却期間そのものの構造については不動産売却の期間はどれくらい?3ヶ月周期の裏事情で別途書いています。

提案を鵜呑みにする前に、内覧数と反響数を聞く

値下げに応じるかどうかは「何ヶ月経ったか」ではなく、問い合わせ数と内覧数という先行指標で判断してください。期間は結果であって、原因ではありません。原因はもっと手前の数字に出ます。

切り分けは3段階で考えると早いです。まず、問い合わせ自体が来ていないなら、価格か露出のどちらかが原因。次に、問い合わせはあるが内覧に至らないなら、写真や間取り図など掲載情報で落とされている。最後に、内覧は入るのに申込が来ないなら、現地で何かが引っかかっている。価格を下げて効くのは基本的に一つ目のケースで、二つ目と三つ目に値下げをぶつけても、値下げ幅の分だけ手取りが減るだけになりやすい。

目安として、首都圏の売れ筋マンションで月5人程度の内覧が一つのラインだと紹介しているサイトがあります。ただしこれは1サイトの記述で、地域や物件種別で大きく変わる数字なので、絶対的な基準として使わないでください。使い方としては、自分の物件の月あたり内覧数が0〜1件なのか、5件前後あるのかという桁の把握で十分です。

そして、この数字は聞かなければ出てきません。専任・専属専任の媒介契約なら業務報告義務があるので、報告書には反響件数が書かれているはずです。書かれていない、あるいは「数件」としか書いていないなら、週ごとの内訳を出してもらってください。数字を出し渋る担当に、値下げの根拠を語る資格はないと僕は思っています。

『相場が悪い』ではなく『入口が高すぎた』ケースの見分け方

値下げ提案の説明は、たいてい「相場が思ったより厳しくて」から始まります。でも売主が疑うべきは、相場ではなく最初の査定額そのものです。

僕が入社2〜3年目のとき、都内の区分マンションで上司から「他社に取られるくらいなら高めに出して預かってこい」と言われたことがあります。相場より300万円ほど高い数字を出して専任媒介をもらいました。そして社内では、最初から3ヶ月後に価格改定を提案する前提で動いていた。実際に2ヶ月半で値下げを提案して、売主は渋りましたが応じました。

あのとき僕が売主に説明したのは「市場の反応が想定より弱い」でした。嘘ではないけれど、本当のことも言っていない。反応が弱かったのは、そもそも反応が返ってこない価格で出したからです。

この構造は、値下げ提案の「早さ」と「幅」から逆算できます。判断材料はこうです。

  • 売り出しから1ヶ月そこそこで値下げの話が出た場合。本気でその価格で売れると思っていたなら、1ヶ月で見切りをつける理由がない。最初から下げる前提だった可能性が高い。
  • 提案された値下げ幅が、他社の査定額との差額とほぼ一致する場合。査定を複数社で取っていたなら、一番高かった会社と二番目の会社の差を思い出してください。その差額に着地する提案なら、入口が上振れていたと考えるのが自然です。

逆に、売り出し価格の設定時に営業が「この価格は挑戦的なので、○週間で反響が○件なければ見直しましょう」と事前に線を引いていたなら、それは戦略としての高値スタートです。悪くない。問題なのは、高値の理由を売主に共有せずに預かる会社です。査定額が会社ごとに違う仕組みは不動産の査定額はなぜ会社で違う?現場が明かす本当の理由に書きました。

値下げの前に試せる選択肢と、相場を自分で確認する方法

値下げは最終手段であって、その前に試せる打ち手が3つあります。掲載写真の撮り直し、広告出稿の見直し、媒介契約の切り替えです。順に効果が出るまでの時間が短く、コストも低い。

まず写真。ポータルサイトで最初に見られるのは価格とサムネイル画像で、ここで落ちると内覧以前の問題になります。暗く写ったリビング写真がそのまま長期間掲載され続けている物件は、ポータルを眺めていれば珍しくありません。撮り直しは値下げに比べて低コストで済むことが多く、数十万円から百万円単位で動く価格改定より先に検討する価値があります。

次に広告の露出。どのポータルに、どのプランで出しているか。レインズへの登録証明書は媒介契約後に発行されるので、登録証明書とポータル掲載URLの両方を、担当営業に出してもらってください。掲載されているつもりで、実は主要ポータルに1枚しか出ていないというケースがあります。

最後に媒介契約の切り替え。専任媒介は3ヶ月で期限が来るので、更新のタイミングは売主が主導権を握れる数少ない場面です。更新しないという選択肢がある前提で、価格改定の話に臨んでください。

そのうえで一番大事なのが、相場を自分で持っておくことです。営業から出てくる「周辺の成約事例」は、値下げの根拠に使う目的で選ばれた事例である可能性を排除できません。だから売却活動中であっても、複数社の査定を取り直して自分の手元に相場のレンジを持つほうが判断が早くなります。今の担当の話が妥当なのか、それとも入口が高すぎただけなのか、他社の数字と並べれば輪郭が出る。値下げに応じる前に手元に持っておくべきなのは、感覚ではなく比較対象です。

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値下げに応じるなら、幅と価格の付け方をどう判断するか

値下げを決めたなら、小刻みに何度も下げるより、1回で意味のある幅を取るほうが実務的には動きが出やすい。数十万円ずつ刻むと、ポータル上で「値下げ履歴が長い物件=売れ残り」という印象が積み上がっていきます。

幅の目安として、売り出し価格の5〜10%、かつ端数を残した価格設定が効果的だと紹介しているサイトがあります。ただしこれも1サイトの記述で、複数ソースでの裏付けは取れていません。参考値として扱ってください。

端数の考え方は理屈が通っています。買主はポータルの検索条件を「◯◯万円以下」のような区切りで設定するので、仮に3,100万円で出していたとすると、2,980万円まで下げれば3,000万円以下の検索網に入る。同じ下げ幅なら、検索の区切りをまたぐ位置に落とすほうが露出は変わります。たとえば3,050万円で止めるとすると、下げた割に見られる母数が増えません。

なお、値下げによって売却価格が変われば譲渡所得や各種特例の判断にも影響します。居住用財産を売却したときの特別控除などの特例を使う予定があるなら、価格を動かす前に税理士に確認しておくと安心です。

今週やることは、たぶん2つだけ

読み終わったあとの動き方を絞ると、こうなります。

ひとつめ。担当営業に「売り出しからの週ごとの反響数と内覧数」を書面で出してもらうこと。メール1本で済みます。出てきた数字で、問い合わせが来ていないのか、内覧が申込に変わっていないのかを切り分ける。ここが決まらないと、値下げが効く場面かどうかも決まりません。

ふたつめ。媒介契約書を引っ張り出して、契約の満了日を確認すること。値下げ提案が満了日の1ヶ月以内に出ているなら、更新セットの提案である可能性を織り込んで話を聞いてください。

値下げに応じること自体は、間違いでも敗北でもありません。市場と価格がズレていたなら、直すのが正しい。ただ、ズレを作ったのが誰なのかを曖昧にしたまま下げると、次の3ヶ月でまた同じ提案が来ます。売却全体の流れを一度俯瞰しておきたい方は家を売る流れ全手順|8ステップと後悔しない媒介契約の選び方もどうぞ。

よくある質問

Q. 売り出してすぐに値下げを提案されました。応じるべきですか?

売り出しから1ヶ月未満での値下げ提案は、いったん保留にして根拠を確認することをおすすめします。売り出し直後は新着物件として注目が集まる期間で、市場の反応を見極める前に価格を動かすとその効果を捨てることになります。週ごとの反響数を出してもらい、本当に反応がゼロなのかを確認してから判断してください。

Q. 値下げを断ったら、営業がやる気をなくしませんか?

断ること自体で活動が止まる会社なら、その媒介契約は見直す対象です。断り方としては、拒否ではなく条件提示が有効で、「あと1ヶ月、写真の撮り直しと広告強化を試して反響が変わらなければ価格を見直す」と期限を切って合意する形にすると、双方に納得感が残ります。

Q. 販売価格は売主の判断で自由に変更できますか?

売り出し価格を決めるのは売主なので、値上げも値下げも売主の判断で変更できます。手続きとしては不動産会社にレインズの登録価格とポータル掲載を更新してもらう必要があるため、変更を決めたら反映日を確認し、更新後の掲載画面を自分の目で見て確かめてください。


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