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媒介契約を結んだ直後は毎日のように電話が来ていたのに、1ヶ月経ったあたりから連絡が途切れる。ポータルサイトを自分で開いて「まだ載ってるな」と確認して安心する。そんな状態で検索してこのページに辿り着いた方が多いはずです。
結論の部分だけ先に言うと、専任・専属専任媒介には法律上の報告義務があり、頻度も決まっています。ただし、義務が守られていても売主が知りたい情報がまったく届かない、ということが普通に起こります。今回はその構造の話と、報告書をどう読んで、担当者に何を依頼すればいいかを書きます。
担当者から連絡が来ない、まず契約書のどこを見るべきか
手元の媒介契約書を開いて、契約の種類を確認してください。専属専任媒介契約なら1週間に1回以上、専任媒介契約なら2週間に1回以上、不動産会社は売主に販売活動の状況を報告する義務があります。宅地建物取引業法で定められた義務なので、担当者の気分や忙しさで免除されるものではありません。
一方で、一般媒介契約には法律上の報告義務がありません。複数社に同時に依頼できる代わりに、各社は報告の頻度を法で縛られていない。「一般で出したのに全然連絡が来ない」という不満はよく聞きますが、これは制度上そうなっているだけで、会社が不誠実とは限らないという話でもあります。
契約書の1枚目、契約の種類にチェックが入っている欄と、報告の頻度が書かれた条項。この2ヶ所を今日確認してください。そのうえで「次回の報告はいつですか」と担当者に日付ベースで聞くのが、今週できる最初の一手です。「近いうちに」で流されないよう、日付で返してもらってください。
種類ごとの縛りの違いは媒介契約3種類の違いと選び方、営業が専任を勧める理由で整理しています。契約前の方はそちらを先に読んだほうが早いです。
「2週間に1回」の報告が薄い定型文で終わる理由
報告義務は頻度だけが決められていて、内容の質については基準がありません。ここが構造上の抜け穴です。「今週も広告を継続しております。引き続き努めてまいります」という3行のメールでも、送りさえすれば法定の報告義務は形式上果たされることになります。
僕は、これはサボりというより営業現場の合理的な帰結だと見ています。担当者ひとりが同時に十数件の売却物件を抱えるのは珍しくない。全件について毎週、閲覧数を拾い、広告出稿の履歴をまとめ、内見者のコメントを起こして文章にする。真面目にやれば1件あたり30分は溶けます。そうすると、動きのある物件に時間を寄せて、動きのない物件はテンプレで回す。皮肉なことに、報告が薄い物件ほど本当は詳しい説明が必要な物件です。
もうひとつ、報告が薄くなりやすい典型が「書くことがネガティブしかない」ケースです。閲覧数が落ちている、問い合わせがゼロ、内見者から価格が高いと言われた。これを正直に書くと、次に来るのは値下げの話になる。売主に嫌な顔をされるのが分かっているから、書かずに「引き続き広告を継続」で濁す。担当者の人柄というより、切り出しにくい話題を先送りしたくなる人間の性質の問題です。
だから売主側は、報告が来ているかどうかではなく、報告に数字が入っているかどうかを見てください。数字が一切ない報告書が3回続いたら、それは「特に動いていません」を丁寧な日本語に翻訳したものだと思っていい。
報告書に本来書かれるべき項目と、指定していい依頼の仕方
業務処理状況報告書(媒介業務経過報告書とも呼ばれます)に本来入るべき情報は、大きく分けて4つです。広告の内容と出稿量、ポータルサイトでの物件閲覧数、電話やメールでの問い合わせ件数、内見が入った場合はその結果と検討者の反応。この4つが揃っていれば、売主は自分の物件が今どの段階で止まっているのかを判断できます。
この4項目は、止まっている場所を切り分けるための指標です。閲覧数が伸びないなら露出か写真か価格表示の問題。閲覧数はあるのに問い合わせが来ないなら、価格か図面情報のどこかで見送られている。内見までは来るのに決まらないなら、現地で何かが引っかかっている。どこで詰まっているかによって、打つ手はまったく別物になります。値下げしか手がないと思い込む前に、この切り分けをしてください。
そして、報告の形式と項目は売主から指定して構いません。宅建業法が決めているのは頻度の下限であって、内容を売主が具体的に要望してはいけないというルールはない。メールで一度、こう送るだけです。「今後の報告に、①掲載中のポータルサイト名と掲載期間、②各サイトの閲覧数、③問い合わせ件数、④内見があった場合の反応、この4点を数字で入れてください」。書面かメールで、記録が残る形で依頼するのがポイントです。口頭は残りません。
もうひとつ、専任・専属専任媒介ではレインズ(不動産流通機構の物件データベース)への登録が求められているとされ、登録証明書の交付を受けられる場合があります。詳細は契約時に必ず確認し、疑問があれば宅建士など専門家に相談してください。登録証明書を受け取っていないなら、まずそれを請求してください。登録番号が分かれば、売主自身が自分の物件の掲載状況を確認する道も開けます。他社からの紹介がなぜか一度も来ない、という状況の見分け方は「商談中です」の裏側―レインズ囲い込みの実態と対処法に書きました。
一般媒介には報告義務がない、では売主はどう自衛するか
一般媒介で活動状況を把握したいなら、売主側から定期的に聞きに行く仕組みを最初に作ってしまうのが現実的です。法律が報告を義務づけていない以上、待っていても各社の裁量に委ねられます。
やり方はシンプルで、契約時に「2週間に1回、メールで活動状況を送ってください」と各社に伝えておく。義務ではないので断られる可能性もありますが、応じる会社が大半だと思います。そして届いた報告を、社名・日付・閲覧数・問い合わせ件数の順に1枚のメモにまとめる。複数社を横に並べて初めて、露出量の差と反響の差が見えてきます。A社だけ問い合わせが多いなら、そこに情報を寄せる判断もできる。
もうひとつ、一般媒介ではレインズへの登録が義務ではありません。一般で依頼するなら「レインズに登録してもらえますか」を契約前に必ず聞いてください。登録すると答えた会社には、登録証明書の交付もあわせて頼んでおく。ここを確認せずに契約すると、自社サイトとポータルだけで細々と募集され、他社経由の買主が来ない状態になり得ます。
報告が改善しない、更新のタイミングで会社を見直す判断基準
専任・専属専任媒介の契約期間は最長3ヶ月で、3ヶ月を超える契約は無効です。しかも自動更新はできず、更新するには売主の意思表示が要ります。つまり売主には、3ヶ月ごとに会社を選び直す権利が制度として保証されています。ここを知らずに惰性で更新し続ける方が多い。
更新するかどうかの分岐は、僕は次のように考えています。報告に数字が入っていて、内見も一定数あり、検討者の反応が具体的に伝わっているなら継続でいい。この場合、売れない原因は会社ではなく価格や条件にあることが多く、会社を変えても同じ結果になります。次に議論すべきは不動産の値下げ提案タイミング、応じる前に見る数字のほうです。
逆に、数字を依頼したのに数字が入らない、内見がゼロのまま理由の説明もない、レインズ登録証明書を求めても出てこない。この3つのどれかが当てはまるなら、更新を見送る検討に入っていいと思います。3ヶ月あって内見ゼロは、価格の問題であれ露出の問題であれ、担当者が売主に説明すべき事柄が必ずあるはずです。それが出てこないのは、単純に手が回っていないサインです。
なお、報告義務違反そのものは宅建業法上の義務違反であり、免許を出している都道府県などの窓口に相談する道はあります。ただ、どの程度の状態が処分の対象になるのか、その手続きにどれだけ実効性があるのかは個別事情の判断になるので、深刻なケースでは宅建士や弁護士など専門家に一度相談してください。現実的には、行政に持ち込むより更新時に静かに会社を替えるほうが早いことのほうが多いはずです。
会社を替えるなら、更新期限の2〜3週間前から動き始めてください。切ってから探すと空白期間ができます。今の会社と比較するために、他社が同じ物件をいくらでどう売る気なのかを並べて見るところからです。査定額の根拠と販売戦略を複数社から出させれば、今の担当者の説明が妥当だったのかも同時に判定できます。
ちなみに、大手と地場では報告の細かさも売り方も傾向が違います。どちらが自分の物件に合うかは大手と地場、不動産会社の選び方は当てる先で決まるを読んでから判断してください。売却全体にどれくらい時間がかかるものかは不動産売却の期間はどれくらい?3ヶ月周期の裏事情で書いています。
今週やることは、契約書の確認と1通のメール
この記事を読み終えたら、まず媒介契約書を開いて種類と報告条項を確認する。次に、担当者へ「①掲載サイトと期間 ②閲覧数 ③問い合わせ件数 ④内見の反応、この4点を数字で報告してください」とメールを1通送る。専任・専属専任なのにレインズ登録証明書を受け取っていないなら、同じメールで請求する。ここまでが今週できることです。
報告の頻度は法律が守ってくれますが、中身の濃さは売主が要求しないと上がりません。報告書は担当者の努力を見る書類ではなく、売主が次の一手を決めるための材料です。数字を出させて、詰まっている場所を特定して、そこに手を打つ。売却の主導権はそうやって取り戻すものだと僕は思っています。
Q. 専任媒介で1ヶ月連絡がないのは違法ですか
専任媒介契約では2週間に1回以上の報告が宅地建物取引業法で義務づけられているため、1ヶ月間まったく報告がない状態は義務を果たしていないことになります。まずは書面かメールで報告を求め、記録を残してください。それでも改善しない場合の行政窓口への相談については、宅建士や弁護士など専門家に個別の状況を相談することをおすすめします。
Q. 販売活動の報告はメールでも大丈夫なのですか
報告は書面が原則ですが、標準媒介契約約款の改正により電子メールによる報告も認められています。売主としてはむしろメールのほうが望ましく、日付と内容が記録として残るため、更新の判断や改善要求をするときの材料にもなります。口頭だけの報告で済まされている場合は、メールでも送ってもらうよう依頼してください。
Q. 報告書に閲覧数や問い合わせ数を書いてもらうことはできますか
依頼して構いません。法律が定めているのは報告の頻度の下限であり、記載項目を売主が具体的に要望することを妨げるルールはありません。掲載サイト名と掲載期間、各サイトの閲覧数、問い合わせ件数、内見時の反応の4点をメールで指定して依頼するのが実務的です。



